
どんな物語にも、「障害」(超えるべき目標や課題)は必要だ。
甲子園を目指す野球漫画で例えてみよう。強力な仲間、優秀な監督。自分のチームが地元最強。チームメイトは仲良く、周りとの関係も良好。ライバル校なんて存在しない。順風円満で甲子園出場を決める……!
……面白いか? この野球漫画。
ということで、物語を面白くするには、「目標達成」の邪魔となる何かしらの要素や問題が必要である。
強豪校。主人公チームは弱小。おまけにチームメイトとはうまくいっておらず、主人公は肘に爆弾を抱えている……など、たぶんこっちの方が読んでいて面白いし、書きやすい。
一昔前は、障害は大きい方が物語としてはも面白くなる、なんて言われていたものだ。
ところが、最近のWeb小説を見ているとそうじゃない物語も流行っている。
主人公が最強だったりチート能力を持っていたり、復讐相手があまりたいした人物ではなかったりと、「超えるべき障害」を簡単に超えられるスペックを持った主人公や設定が多いのだ。
こうした物語は、読者にストレスがかからない。作者自身もすらすら書ける。
- 「転生したらスライムだった件」
- 「賢者の孫」
- 「魔王様、リトライ!」
などに代表されるいわゆる「小説家になろう」で人気が出る作品にはこうしたものが少なくはない。
こうした「障害が小さい」作品は、読者にとってストレスがかかりにくいというメリットがある。読んでいてストレスがかからないし、爽快感がある。電車の中やちょっとした空き時間にもすらすら読める。Web向きのストーリーの作り方と言えるだろう。
とはいえ、「障害の大きな作品」も、やはり強い。
- 「Re:ゼロから始める異世界生活」
- 「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~」
のように、主人公が大きな障害を前に、悩み苦しむという作品もある。読者にストレスはかかるものの、それを乗り越えたときのカタルシスや感動もひときわ大きい。ヒットする可能性も低いが、ロングヒットしやすいのはこちらの方に思える。
別の例としては、
- 「PSYCHO-PASS」
- 「攻殻機動隊」
- 「メイドインアビス」
のように、「最大の障害」が主人公の力ではもはやどうにもならない、という作品も存在する。
自分の作品に合わせてどのレベルの障害を設定するのかも、作品を作っていく上で重要な要素になるのではないだろうか。