――”「作者が書きたい話」と「読者が読みたい話」は違う。”
これはよく言われることではある。
料理で例えれば話はシンプルで。
例えば、あなたのお店にやってきた客は「スパゲティ」が食べたいのに、あなたは「ラーメンを味わって欲しいから」とラーメンを提供する。
よほどお腹が減っていれば口にするかもしれないが、普通は怒って帰ってしまうか、文句の一つでも言ってくるだろう。
作品を読んでもらう、感想をもらうためには「読者」という存在は不可欠で、創作においては切り離すことはできない。
ツイッターや私の元に寄せられてくる作品を見ていると、「読者に読んでもらえない」「読者からの感想がなかなかもらえない」といったツイートをしばしば見かける。
ところが彼らにこう問いかけると、具体的な答えがいまいち返ってこないのだ。
「あなたの言う、読者って誰のことですか?」
男性、女性、年齢層、好きな作風――そのあたりは返ってくることも結構ある。じゃあ、「その読者に好かれるためにあなたはどんな工夫をしていますか」と問いかけると、それに答えられる人は1割にも満たない。
感想をもらったり、一定以上読者を確保できている作者に意見を聞くと、このあたりはちゃんと答えが返ってくることが多い。
- 毎日投稿する
- トレンドに乗る
- タイトルを工夫する
このあたりのことはWeb小説のセオリーとして知られているし、実践している人も多い。にもかかわらず読者が増えなかったり感想が返ってこなかったりするのは「それらの工夫を誰のためにやっているのか」という視点が欠けているためではないかと思う。

毎日投稿する際のコツ
毎日投稿しているけど読者がなかなか増えない。
そんな人は、次のようなことをやってはいないかチェックしてみて欲しい。
- 朝の9時頃投稿している
- 投稿している時間帯がバラバラ
学校の一限目、会社で言えば始業ベルが始まってメールのチェックなどをする時間帯。朝の9時頃は、おおよそ学生や社会人にとってはもっとも忙しい時間帯だ。こんな時間に投稿しても、読まれる確率は低いし、新しい投稿に埋もれてしまう可能性が高い。
投稿する時間帯は、統一した方がいい。
これはYoutuberなどもよくやる手法だが、時間帯を同じくすることで、読者に読むことを習慣化させるためだ。
「ああ、もう21時か。そろそろあの作品の最新話が投稿されてるな」
そう思ってくれる読者が増えれば、可読率は向上する。
バラバラな時間帯に投稿しても、読者に「読む」という習慣が紐付かないし、あとでまとめて読めばいい、ということになる。
もっと言えば、読者が暇になる時間帯は想定すべきで。
例えば学生なら、学校が終わって帰ってきて夕食までの一息をつく17時頃の時間帯。サラリーマンなら家に帰ってきて寝るまでの21~23時頃の時間帯を想定して投稿する、といった具合だ。
「自分の読者のライフスタイルを想像して、その読者に最も読んでもらえそうな時間帯に投稿する」という習慣を書き手側がつけるだけでも、反応はかなり変わってくると思う。
トレンドに乗る
小説家になろうで言えば「ざまあ系」や「スローライフ」など、そういった注目されている作風に乗るということ。
ここで、一番注意しなければならないのはトレンドには「寿命がある」ということ。タピオカ、100ワニ然り、トレンドはトレンドに乗れなければ意味がない。
「読者に読まれたいから、流行に乗った作品を書いてみよう」と思っても、その流行が終わりかけなのか、それとも流行になりたてなのかで作品の寿命もだいぶ変わってくる。
何より、トレンドの作品は多く投稿されるので、読者が移ろいやすいということも考慮しなければならない。
最初は読まれてたけど、話を進めるにつれて雪崩式に読者が減っていく、といった自体もザラだ。
トレンドに乗るには、「どんな読者がトレンドに乗っているのか」という特性を把握しておかないと、成功するのは難しいだろう。
登場人物に読者を反映する
シンプルに可愛い女の子を出しておけば、読まれるといった安易な考えを持っていないだろうか。
「可愛い」ってなんだろうと考えると、読者の世代や価値観によってもだいぶ変わるものだ。
例えば10代の高校生が読む作品としては、同年代の女の子のうぶだけどまっすぐな感情を可愛いと思うかもしれない。恋愛経験が豊富な20代、30代になってくると、うぶだけでは物足りなくなってくるかもしれない。
読者に「恋愛対象としてのヒロイン」を意識させるなら、読者の価値観も反映させる必要がある。
「悪を倒すことが正義」という単純な思想も、年を重ねた大人には通用しなくなってくるかもしれない。
逆に、仕事で疲れて帰ってきた社会人向けには、何も考えずに読めるキャラクターの方が受けるかもしれない。
読者が何を求めているのかを意識することも、読まれるためには重要な工夫だ。
読者を意識するコツは、画面の向こうに人がいるということをちゃんと想定すること
一方的に発信するだけではリアクションは得にくい。
これは講談やスピーチでも同じだ。
自分の作品になぜ読者がつかないのか。感想がもらえないのか。といった疑問を解消するにはまず、「自分は誰に向かってその作品を発信しているのか」を想定して、その読者がちゃんと読んでもらえるような工夫をした方がいい。
小説とは「作者」と「読者」の両方がいなくては成立しない。一方を無視した小説は、およそなり立たないのである。
もちろん、「自分が書きたい作品をひたすら書く」という姿勢を否定する気もない。それはそれで創作の一つの在り方だ。
けれど「自分が好きなように書いておきながら、読者が増えないのはなぜだろう」という疑問は通らないのではないか。読者を増やそうと思うのなら、作者側からある程度は歩み寄る必要がある。そういう話。