「読者はストレスを嫌う」は嘘。物語を面白くするコツはストレスをコントロールすること

「読者はストレスを嫌う」という言葉がTwitter上でちらほら散見される。

たしかに、最近の読者は主人公が苦境に立たされたり、シリアス展開だったり、ショッキングなイベントがあるとすぐに作品を離脱してしまう傾向がある、と言われている。

Twitterでバズったり、Web小説サイトでランキング上位にあがるのは、ストレスフリーで読める作品が多いのは事実だ。

……だが、ここで立ち止まって考えてみてほしい。

2020年に大ヒットした「鬼滅の刃」はストレスのかからない作品だろうか?第一話で主人公の一家が惨殺され、妹が鬼になり、主人公が鬼を狩る者として戦うこの作品は、読者にとってもっともストレスのかかる作品ではないだろうか。

2020年に全米でもっとも興行収入をあげた映画は「アベンジャーズ エンドゲーム」だが、この映画だってストレスとは無縁とは言いがたい。

そもそも、映画やゲーム界隈、ドラマなどの市場では、Web小説やTwitterに流れているような、誰もがあっさり読めるストレスフリーな作品の方が希なのである。

Web小説に至っても同様だろう。「Re:ゼロから始まる異世界生活」「無職転生」などなど、ヒット作の中には読者に多大なストレスを強いる作品も多い。

一方で、主人公が葛藤したり、痛い目にあったり、そういう作品を敬遠する声があるのも事実である。

なぜこのようなことが起こっているのだろうか。

ストレスには「良いストレス」と「悪いストレス」がある。

ストレスは一概に悪いとは言えない。

例えば、「試験前にかかるプレッシャー」「運動部の試合前の緊張」などもストレスではあるが、これは過度に与えられなければ、良い方に働く面もあるだろう。「緊張感」というものだ。

ジェットコースターやホラー映画も、人に対してストレスを与えるが、悪いストレスではない。

新しいことを始めたり、目標に向かって努力するのもストレスがともなうものだ。このように、ストレスが人にとって良い影響をもたらすこともある。

一方、対人関係や将来に抱える不安や、彼女に振られた、仕事が連日遅くまで続いてつらい、無理をしてでも自分を追い込まなければならないといった過度のストレスは、不眠や倦怠感、精神疾患につながってしまうこともある。

こうした「悪いストレス」は人に対して悪影響を与える。

このように、ストレスには2種類あり、一概にストレスをかけること全てが悪だとは言えないのだ。

ストレスがまったくないとどうなるのか

フリー写真 実験室で薬品を使って分析中の化学者

1951年、カナダの心理学者ドナルド・ヘッブが行った「感覚遮断」という実験がある。光も音も匂いもない部屋の中に一定時間拘束するというもの。目にはゴーグル、手にはグローブをつけて、耳も塞ぐ。

こうした実験の結果、ストレスのまったくない状態で一定時間過ごし続けると、注意力が散漫になったり、思考力が衰えるという結果が出たそうだ。

ストレスのまったくない状態は、人間に対してかなりの悪影響を及ぼすことがわかっている。

「読者はストレスを嫌う」は嘘なのか

フリー写真 仕事中の設計士のデスク風景

ここまで解説してきたとおり、ストレスには良いストレスと悪いストレスがあり、世の中に出ている作品の中には、読者に対してストレスを強いるものも多くある。

「ストレスがかかる作品だから読者が離脱する」というのは、間違いだ。

むしろ過度なストレスは読者を引き寄せる。

怖くないホラー小説が面白いだろうか。

人の死なないデスゲームが面白いだろうか。

ストレスはうまく扱うことができれば、それだけ作品を魅力的にすることができるのだ。

ストレスのせいで読者が離脱してしまう要因は?

フリー写真 読書中の本と手

しかし、ストレスを感じたことで読者が読むのをやめてしまうという現象は実際に起こりえる。

それにはおおよそ、つぎの2つの要因が考えられる。

ストレスがかかりすぎる

思い入れの強すぎるキャラクターの死、バッドエンド、鬱展開など、あまりに強すぎるストレスを受けた場合は、読者は離脱する可能性がある。

これに対する対処は2つしかない。ストレスを減らすか、離脱した読者を諦めるかだ。

キャラクターが死なずに戦線を離脱する、鬱展開をなるべく短くする、別の展開を考えるなど、読者にかかるストレスを軽減する方法がまず1つ。

だが、こうしたストレスを減らす対策を行うことで作品の持ち味が死んでしまう可能性もある。ストレスを大きいと感じるかどうかは、個人差がある。ストレスを軽減することで、逆に今のストレスをちょうどいいと感じていた読者が離脱してしまう可能性も考えるべきだろう。

そのため、「この展開で離脱されてしまうのなら、仕方がない」と読者を諦めるということも、必要になってくる。

要は、読者層をきちんと想定することが重要だ。

ストレスの方向性が間違っている

ジェットコースターに乗る人は、スピード感とスリルを求めている。

ホラー映画を見る人は恐怖とスリラーを求めている。

つまり、作品を読む読者はあらかじめ「この作品からどのようなストレスを受けるのか」をある程度想定しているのである。期待感とも言う。

この期待感の不一致が、読者を離脱させる最大の要因になりうる。

恋愛作品を読みたい読者が受けたいストレスは「主人公とヒロインがくっついたり離れたりすることによって生じるハラハラ感だったり、恋の駆け引きで生じるストレス」だ。

では、ヒロインが突然事故で死んでしまったらどうなるだろう。

「自分が期待していたストレスをこの作品からは得られないのではないか」「思っていたストレスと違うストレスを受けた」ことにより、読者は離脱するだろう。

これは「小説家になろう」で、「主人公に冷遇した人物が報いを受ける」といういわゆる「ざまあ展開」にも言えることで、読者が期待していた展開が終わってしまえば、それ以降は程よいストレスやストレスから解放されたときのカタルシスを感じることに期待が持てないため、離脱するのだ。

ストレスフリーな作品も魅力はある

誤解して欲しくないのは、すべての作品に対して「面白くするためにはストレスが必要だ」と主張しているわけではない。

Web漫画などは、気軽に読めるストレスフリーな作品も十分に需要がある。それはそれで良い。

ただし、作品を面白くするためには意図的にストレスをかけなければならないものもあるのだ。

それは、半沢直樹のようにストレスから解放されるときの爽快感や、バトル作品の緊張感を得るためには必要なものだ。

なんでもかんでも、ストレスをかけなければ良いというものではない。要は、かけかたの問題である。

読者にかけるストレスの方向性と大きさをコントロールすることが重要なのではないだろうか。

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