「呪術廻戦」がなぜヒットしたのかを、シナリオ的な要因から考察する

週刊少年ジャンプ連載の「呪術廻戦」が2020年10月からアニメ化していますね。コミックスの売り上げもアンケートも好調。週刊少年ジャンプの中でも、もっとも勢いのある作品だと思います。

独特な絵柄やキャラデザ、能力など面白い要素は盛りだくさんなのですが、物書きとしては、「呪術廻戦」を物書き的な観点から解説していきたい次第。なぜ「呪術廻戦」がここまでヒットしたのかを、シナリオ的要因に特化して抽出してみたいと思います。

ヒット要因①「魅力ある台詞回し」

「呪術廻戦」の台詞回しは、かなりセンスがあると思います。自分がこの作品にはまるきっかけになったのも、以下の台詞でしたし。

「呪術廻戦」2巻10話より

物語とは「キャラクター同士の掛け合い」なので、キャラ同士の掛け合いがお洒落な作品というのは、それだけでアドバンテージになります。

同じジャンプ作品の「BLEACH」、他紙では「トライガン」「ブラックラグーン」「ヘルシング」など、センス溢れる台詞に惹かれた読者は多いはず。

センスの良い台詞回しは読者を惹き付けます。

ヒット要因②「結末がわからない」

これは恋愛作品に置き換えるとわかりやすい。恋愛作品には大まかに2種類ある。「めぞん一刻」や「I”s」のように、「最初から結ばれるヒロインが明らかで、どう結ばれるのを楽しむのか」という漫画と、「誰と結ばれるのかを楽しむ」という漫画。

「五等分の花嫁」(1)より

「五等分の花嫁」や「ぼくたちは勉強ができない」は、後者のタイプ。最近よくメディアミックスされるのはこっちのタイプが多いですね。

この法則は、実は他のジャンルでもあてはまる。アニメ化が決まっている「ダイの大冒険」は、ダイが大魔王を倒す以外の結末はないわけですし、「ONE PIECE」だって、ルフィが海賊王になるという結末は、すでに多くの読者が予想するところでしょう。

うってかわって、「呪術廻戦」はどうなのか。

「呪術廻戦」(1)より

どうあがいても死ぬしかない主人公。

けど読者的には、「主人公の虎杖が死ぬ結末」で終わりになるとはまったく思えないし、死ぬにしても何かしら一幕あるんじゃないかって期待感がある。

他の作品でいえば「進撃の巨人」や「チェーンソーマン」なども、どのような結末を迎えるのかがまったく読めない。先の展開が読めず読者に期待感を持たせるというのも、「呪術廻戦」を魅力的にしている要素だと思う。

ヒット要因③「キャラロス・新キャラ登場のバランス感覚に優れている」

ネタバレしてしまうのでここではあえて言及しないが、「呪術廻戦」は結構重要なキャラが戦闘不能になったり死んだりしていく。

重要なキャラが物語上で死んでいくことで「誰が生き残り、誰が死んでいくのか」のハラハラ感を読者に味わわせることに成功している。

「主要キャラでも死んでいく」というのは、先に挙げた「進撃の巨人」などでも使われる手法で、物語の先を読みにくくする。

ただし、殺しすぎるのもいけない。物語の進行上重要なキャラまで殺しすぎると、話はグダるし、「先が読めない」ではなく「先がどうでもいい」に読者の感情が変わってしまう。

キャラクターを退場させる手法はたしかにインパクトを集めるが、使いすぎるのも考え物。読者に人気、支持するキャラを殺すと、読者を失ってしまう可能性もあるでしょう。

「呪術廻戦」は、このあたりのバランス感覚がわりと絶妙。「キャラクターを殺すことで読むのをやめてしまう」という風にはなっていないと思います。いまのところは、ですが。

ヒット要因④「敵キャラを魅力的に描けている」

特に少年誌系でヒットするためには重要なことだと思います。「HUNTER×HUNTER」や「ONE PIECE」など、ヒットする少年漫画は敵キャラも魅力的であることが多い。

魅力的な敵キャラというのは「主人公の見せ場に用意された舞台装置」ではなく、「敵キャラならではの魅力がある」ということ。

「呪術廻戦」は、それが非常に丁寧に書かれている作品。

「呪術廻戦」では、2通りの敵キャラの描き方がされている。

1つは、夏油や漏瑚のように、目的や意思を持ち、感情移入できる敵キャラ。

「呪術廻戦」(2)より

「呪術廻戦」の0巻からはじまり、読み進めていけば敵の首謀者である「夏油 傑」は、目的や性格がきちんと設定されている。呪霊である漏瑚や花御は、先頭における見せ場があって、姿形は人間でないもののカッコイイと思ってしまう。

「敵にも敵の事情があるんだ」という、物語に深みを与えるために使われる手法だが、いわゆるお涙頂戴の三文芝居にも移りやすく、物語が複雑化しやすいので少年誌的には好まれない場合も多い。

そこで、「呪術廻戦」はもう1タイプの敵キャラを出している。「両面宿儺」「真人」に代表される暴力装置としての存在。

「呪術廻戦」(4)より

「こいつらとっとと死んでしまえばいいのに」「主人公が勝つのを期待!」という、事情もへったくれもない、悪役オブ悪役。

こういう悪役がいることで、主人公サイドを素直に応援できるようになります。

「呪術廻戦」は、この2通りの悪役をうまく使い分けているのも、魅力となっている要因に思える。

キャラクターを一段階掘り下げた多様性と台詞回しが良い

台詞回しのセンス、結末不明の作品構成に加えて、悪役の魅力が、他作品との違いであり、ヒットする要因になっていると思う。

特に悪役の作り方は見習うべきところも多い。

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